言葉だけ聞くと、「子供っぽい大人」「大人になりきれていない人」「未熟な人」という印象を持ちますが違います。
アダルトチルドレンは特別なものではなく、対象問わずに統計的にみると、日本の人口の約80%と言われています。
アダルトチルドレンとはどんな人か
子どもの頃に、「機能不全家族で育った人」のことです。
アダルト・チルドレン(Adult Children:以下AC)
ACは、病名やレッテルではなく、自分がACだと思えばAC。自己認知です。
ACの人は、思春期に反抗期がなかった人が多いです。
成人してからも、人間関係に行き詰まったり、何のために生きているのか分からなくなったり、緊張で疲れてしまいます。
機能不全家族は、「自分の感じ方」の問題です。たとえ、「悪い子」であっても、変わらず愛されていたかもしれません。ですが、自分が「いい子でなければ愛されない」と思い込み、いい子であり続けようと、感情を抑え込んで育ったためです。
アダルトチルドレンの「5つのタイプ」
アダルトチルドレンには、さまざまなタイプがあります。
アダルトチルドレンの類型、タイプ分けについてはいろいろな提案があり、一律のものはありません。
ここでは、代表的なタイプだけを選択して解説しています。
ヒーロー(英雄)
勉強やスポーツで良い成績や、評価をもらうことを第一と考えるタイプです。
周囲からは、「しっかり者」「頑張り屋さん」というように見られますが、そうした努力は自分のためではありません。
親の期待に応えるためだったり、家族の雰囲気を悪くしないための防衛的で、後ろ向きな動機からです。
このタイプは、期待に応えるために、頑張り続けなければなりません。
こうした努力が実っているときはいいけれど、それが何らかのきっかけで挫折したり、失敗したりしたときに、心がぽっきりと折れてしまい、破綻してしまいます。
スケープゴート(生贄)
ヒーローとは反対に、自ら問題行動を起こして、家族のバランスを取ろうとするタイプです。
過剰に低い成績を取ったり、迷惑をかけて心配させる。
家族の憎しみや怒り、不満などを一人で引き受ける行動をとります。
これにより、本当の問題から家族の目をそらさせる、家族の中のゴミ箱的な役割とも言えます。
ロスト・ワン(いない子)
家族の中での存在を消し、いない子どもとして生きていこうとするタイプです。
大人しく手のかからない、存在感の薄い子です。
家族とのコミュニケーションにおいて、一種の諦めがあります。
また、自分の感情を自分で処理する傾向が強く、人を避けようとします。
ケアテイカー(世話役)
献身的に家族の世話をし、支えることを過剰なまでに行うタイプです。
それは自己犠牲的であり、自虐的でもあります。
親に代わって家事をしたり、養育をしない親に代わって、弟妹の面倒をみたりします。
そして、自分のことは何でも後回しにしてしまいます。円満な家庭を維持できるように、ひとりで背負って家族が崩壊しないように、バランスが取れるように努力します。
ピエロ(道化師)
空気が悪くなりそうになれば、おかしなことをしたり、おどけて明るい雰囲気を作ろうとするタイプです。
クラウン(王冠=clown)という呼び方もされます。
ひょうきんで明るい性格に見えますが、過度に雰囲気を読み取り、人の表情を伺い、どうすれば険悪なムードにならないかと常にビクビクしていたりします。
この5タイプ以外に、「リトルナース」や「プリンス・プリンセス」などもあります。また、「ケアテイカー=リトルナース(世話役)」に包括されているケースもあります。
ACの概念
1970年代にアメリカで提唱され始めました。
もともとは、アルコール依存症の親をもつ子どもたちが、大人になったとき「対人関係の問題」や「生きづらさ」に悩み苦しんでいる人が、多くいることがわかり広まりました。
日本では、さらに意味が拡大されました。
家族システムの危機や、他者の期待を過剰に感じとる状況に陥り、その結果、自己のアイデンティティの不安定さや、ある種の「生きにくさ」を感じる人のこと。PTSD(心的外傷ストレス性障害)に悩む人を指すようになりました。
チェックリスト
・周囲が期待しているように振る舞おうとする
参考:斉藤学著『アダルト・チルドレンと家族ー心のなかの子どもを癒す』(学陽書房)
・何もしない完璧主義者である
・尊大で誇大的な考え(や妄想)を抱いている
・「NO」が言えない
・しがみつきと愛情を混同する
・被害妄想におちいりやすい
・表情に乏しい
・楽しめない、遊べない
・フリをする
・環境の変化を嫌う
・他人に承認されることを渇望し、さびしがる
・自己処罰に嗜癖している
・抑うつ的で無力感を訴える。その一方で
心身症や嗜癖行動に走りやすい
・離人感がともないやすい
アダルトチルドレンの治療法はあるのか
ACは病気ではないため、非医療的なアプローチになります。
- 自分の置かれた状況について知ること(ACの自覚)
- 自己の過去に直面するなかで、怒りや抑うつ感などの感情を表現する
- 新しい人間関係をつくる
本やネットで、情報や知識を持ち「自覚する」ことからはじめます。
そして、同じような悩みを持った人や、安心できる場所をつくります。ときには、医者や専門家に相談することも必要です。
自分がACであると自覚し、生きにくさを理解することで、自分を責めることから解放されてることが目標です。
最後に
僕は小学生の時に、父親を病気で亡くし、母子家庭で育ちました。
年の離れた弟の保育園のお迎えに、毎日行っていました。
中学生の兄の反抗期がすごく、泣いている母親を見ていました。
自分は、母親を泣かせてはいけない。弟の面倒を見なくてはいけない。
と、勝手に決心していました。
その結果、子供らしい振る舞いをせず、感情を抑え込んでいたんだと思います。
HSPというのも、大きな要因です。
片親でしたが、不自由なく生活していたので、自分がACと自覚がありませんでした。
あるとき、YouTubeでACについて話している方の動画を見て、はじめて自覚しました。
機能不全家族という言葉が強すぎて、自分が育った家庭が「ダメな家庭」だと言われた気がして、認めたくない気持ちがありました。
ですが、これは「育った家庭」の問題ではなく、「いい子でなければいけない」という自分の思い込みが原因だったと感じています。
難しいことですが、これからは感情を抑え込まず、家族の前で自分を表現することを心がけて、少しでもこれからの人生を、生きやすいものに変えていこうと思います。
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