HSPという言葉を知る前は、HSPの特性をすべて「自分の弱点」と考えていました。
・細かいことを気にし過ぎる
・自分の意見を言うより、人の話を聞いてしまう
・大勢と長時間いると疲れる
・同時進行で出来ないから、ひとつずつ取り掛かる
・大きな音にビクッとなる
弱点があるから、克服しないと!
と、当然のように思いますが、これが間違いです。
HSP気質は弱点ではありません。
その前に、「弱点は克服すべきもの」ですらありません。
では、なぜ「弱点=克服すべき」という思い込みが発生するのか?
それは、生まれたときから始まっている「競争」と「他人との比較」で育った思い込みのせいです。
HSPは克服するものではない
弱点は克服すべきという呪縛
人間は生まれたときは、何もできません。
ただ泣いて、何かしてくれるのを待ちます。
すべてのことを与えられることで生き延びてきました。
オギャ~オギャー(お腹すいた。うんち出た)
そして、成長するにつれて、できることが増えてきました。
歩けるようになる。ひとりでトイレに行ける。お風呂に入れる。
ですが、この頃からすでに「競争」や「比較」がはじまっています。
「普通」は、1歳になるころには歩けるようになるはずだ。
「正常な子なら」、1歳6ヶ月までに話せるようになるはずだ。
「他の子に比べて」、うちの子はオムツが取れるのが遅い。
「一般的」に〇歳のときは、〇〇が出来ているはずだ。
こう考えるのは、おかしなことではなく、基準がどこか分からないから、他の子と比べるしか判断できません。
もしかしたら、歩けるようになるのが他の子に比べて遅いけど、好き嫌いなく食べられるかもしれない。話せるようになるまで遅かったけど、字を書くことはすぐに覚えた。
得意なこと、不得意なことがあって当たり前ですが、学校や社会では平均点を取れることが、良いとされています。
もしも、劣っているところがあれば、克服すべき問題となります。克服するには、自分が弱点と感じているところとずっと向き合い続けなければなりません。これは、社会に出てからも、ずっと同じ考えを持ち続けます。
人前で話すのが苦手だから、克服しなければ・・・
コミュニケーション能力が低いから、セミナーに通わなければ・・
そして、ビジネス書を読み漁り、本の通りに出来ない自分にガッカリして、自己肯定感を下げることになります。
これは、数年前の僕です。
「初対面の人とうまく話ができる方法」や「メンタルを強くするトレーニング」など、たくさん本を読んでは、挫折していました。
平均点を取る「動物学校」
スティーブン・R.コヴィー著「7つの習慣」より
昔々、動物たちは「新しい世界」のさまざまな問題を解決するために、何かしなければならないと考えて学校をつくりました。
学校では、かけっこ、木登り、水泳、飛行を教えることになりました。 学校の運営を円滑にするために、どの動物も全部の科目を学ぶことになりました。
アヒルは、水泳の成績は抜群で、先生よりも上手に泳げるくらいでした。
飛ぶこともまずまずの成績でしたが、かけっこは苦手です。
かけっこの成績が悪いので、放課後もかけっこの練習をしなければなりませんでした。
水泳の時間もかけっこの練習をさせられました。
やがて、足の水かきがすり減って、水泳の成績が平均点まで下がってしまいました。
学校は平均的な成績でいいとされていたので、アヒルの水泳の成績が落ちたことは、アヒル本人以外は、誰も気にかけませんでした。
ウサギは、かけっこの授業でトップでした。
ところが、水泳が苦手で居残り授業ばかりさせられているうちに、すっかり神経がまいってしまいました。
リスは、木登りが上手でしたが、飛行の授業で、先生から木の上からではなく地上から飛べと言われ、ストレスがたまってしまいました。
練習のしすぎでヘトヘトになり、肉離れを起こし、木登りの成績はCになり、かけっこもDに落ちたのです。
ワシは問題児で、厳しく指導しなければなりませんでした。
木登りの授業では、どの動物よりも早く上まで行けるのですが、決められた登り方ではなく、自分のやり方で登ってしまうのです。
結局、学年末には、泳ぎが得意で、かけっこはまあまあ、木登りも飛行もそこそこという風変わりなウサギが一番高い平均点をとり、卒業生総代に選ばれました。
学校側が、穴掘りを授業に取り入れてくれなかったことを理由に、モグラたちは登校拒否して、その親たちは、税金を納めることに反対しました。
モグラたちの親は、穴熊のところに子どもに穴掘りを教えてくれるように頼みました。
その後、タヌキたちと一緒に私立学校を設立して、成功を収めました。
HSPは克服しないで活かすもの
自己肯定感を高めるために、よく「自分の良いところを紙に書いてみましょう」というやり方があります。
僕は、これが苦手でした。
思いつかなくて、ペンが止まると「やっぱり自分には良いところなんてないのかもしれない」と落ち込んでしまうからです。
逆に「自分の短所を書いてみましょう」という課題はすぐにできます。普段、他の人と比べて劣っていると感じていることが、たくさんあったからです。
ですが、実は「良いところを書く」と「短所を書く」は同じことです。
思いつく限りの「短所」を書いてみる
短所はいっぱいあるよ。自分のダメなところなんて書きたくない・・
そう思うのは当然ですが、ここは試しに書いてみましょう。
例えば、冒頭で挙げたHSP特性の短所。
これは「長所」と見ることができます。
弱点はいわば他の人と違うところで、自分だから感じられることです。
このやり方で、自分の短所がスラスラ出れば、それだけたくさんの長所があるということです。
逆に、「紙に書いてみると思ったほど短所がないかも」となれば、最初から落ち込む必要はありません。
どちらに転んでも、自分に自信をつけることができます。
まとめ
HSP気質は、弱点ではなく活かすものです。
弱点を克服して平均点を取りにいくと、動物学校のように、長所をなくしてしまうことになります。
今いる職場が、どうしてもHSP気質をなくさなければ働けない場所なら、活かせる職場を探す必要があるかもしれません。
僕は以前10年間ホテルマンをしていました。
今思い返すと、細かいところが気になっていました。ホテルはシフト制で、24時間稼働しているので「引継ぎ」がとても重要です。ちゃんと次のシフトに伝えなければ、連絡ミスが起こり、お客様に迷惑を掛けることになります。
人によっては、引継ぎ帳に書かず、口頭で説明して終わりにしてしまうことがありました。
本人が書くほどではないと、自分で判断しているからです。
新人のときは、「引継ぎ帳にすべて残してください」と言えませんでしたが、自分がフロントチーフになってからは、「部屋番号、ゲストの名前、引継ぎ事項、担当者」をすべて書くようにしました。
もし、引継ぎ帳に書かれてないことを、シフトチェンジのときに言われたら、必ず書くように指導していました。
たまに、「フロントみんなが周知すべき変更事項」などを、口頭で済ませる上司がいたので、「すべて書面でください」と言ったこともあります。
このときは、「自分は細かいことがすごく気になる・・。後輩も上司も自分のことをうるさい先輩。使いずらい部下。と思ってるんだろうな」と自覚していました。
ですが、今思い返せば、仕事を円滑に回すためにはうるさく言うひとが必要だったと分かります。必要な役割をするための「長所」でした。
僕は、いま40代で知ることが出来ましたが、もっと早く知っていたら考え方や働き方も違っていたかもしれません。
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